2016年2月11日木曜日

シェルブールの雨傘 後編



トレンチコートの着こなし


この映画ではトレンチコートの着こなしも見どころの一つです。

トレンチコートは元々、軍用のコートとして開発された歴史があり、「ギャバジン」という綿に防水加工をした素材で作られていて、雨風に強くレインコート的な役割も果たします。

シェルブールの雨傘は名前の通り雨のシーンが多いです。小雨が降っている時や雨上がりのシーンで、カトリーヌ・ドヌーヴ扮するヒロインはたびたびメンズライクなトレンチコートを着ています。




ベルトをサイドに垂らして着ています。こういう着方もアリなんだ、と衝撃を受けました。




恋人を戦地へ送り出すシーンでもベルトは締めずにラフに着ています。本当に向こうではレインコート感覚なのでしょうか?
こんな日は恋人ギーもわかりにくいですが、かしこまった格好をしています。

このヒロインが着ていたコートは、たびたびあのチェックの裏地が見え隠れしていたので、おそらくバーバリーのものと思われます。


マタニティドレスはドヌーヴ自身の私物だった


この映画の作品の前に出産をしたばかりだったドヌーヴ。この映画に出てくるマタニティドレスはドヌーヴ自身の私物を使ったそうです。


ニットのドレス。さりげないスパンコールが素敵です。



こちらも色彩が美しい花柄ワンピース。ドヌーヴさん、もしやブルーがお好きなのかも…。



カジュアルな雰囲気の淡いブルーのワンピース。頭のリボンと色を合わせていて可愛い。

赤いコートは前編に登場した白いコートと同じデザインな気がします。フロントボタン部分が似ています。

こちらの傘屋さんのディスプレーも素敵です。インテリアも素敵なのでご紹介したいところですがそちらはまたおいおいしていきたいと思います。



最後に数年後のヒロイン。


可憐で憂い顔の少女から、大人の女性へ。

二人にとって本当の幸せとはなんだったのかはわかりません。
あらゆる事を経験すればするほど、幸せの概念は変わってきます。それを世間ずれというのかも。


歳をとって見るほど、見た後に考え込んでしまう映画です。

2016年2月9日火曜日

シェルブールの雨傘 前編


『シェルブールの雨傘』 1964年 フランス
ジャック・ドゥミ監督が33歳の時の作品。
この映画でこの年のカンヌ国際映画祭グランプリを取り一躍有名に。

 

ヒロインのパステルカラーファッション




カラフルな色彩が印象的な映画ですが、衣装やインテリアを担当したのは、トリュフォーの『大人は判ってくれない』やゴダールの『女は女である』等を手掛けた美術監督のベルナール・エヴァン。
ヒロインのカトリーヌ・ドヌーヴの衣装はパステルカラーにして、背景や脇役の服装は原色や黒を配して、ヒロインの可憐なイメージを際立たせました。



白いコートと手袋、クラッチバックできちんと感あるお出かけスタイル



上記の白いコート、開けて着てもフロントボタン部分のデザインが可愛いです。




デートの時はピンクのコートに黄色のリボンで可愛らしく




ギンガムチェックのワンピースを黒いリボンと靴を合わせて。髪が美しいブロンドなのでちっとも重くなりません。


カトリーヌ・ドヌーヴは当時21歳。この撮影に入る前に当時の恋人ロジェ・ヴァディムと別れ、未婚の母となったばかりだったのです。

戦争によって翻弄された若い女性の苦悩や悲しみを見事に演じ切ったのも、私生活でも複雑な思いを抱えていたからでしょう。

ドヌーヴは一人で子供を育てるためにこの映画に出演したそうですが、映画を撮り終えた後「初めて自分というものに目覚めた」とこの映画との出会いを語っています。

逆境を見事にプラスに変えていったカトリーヌの強さに憧れます。